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平成25年(2013年)10月21日~23日の3日間、市議会の行財政改革特別委員会で倉敷市、浜松市、佐倉市へ赴き視察研修を行いました。

視察名
行財政改革特別委員会 行政視察
視察期間
平成25年(2013)10月21日(月)~23日(水)
参加メンバー
萬代輝正(委員長)/遠藤力一(副委員長)/湯淺啓史/渡部 勝/大場利信/井原 優/飯塚俊之/米山広志
視察先及び調査事項
岡山県倉敷市:公共施設白書 公共施設の現状と課題、今後の取り組みについて
静岡県浜松市:公共施設再配置計画 効率的な公共施設の運営・管理について
千葉県佐倉市:施設白書 ファシリティマネジメントの推進について

研修概要

岡山県倉敷市
日時
平成25年(2013)10月21日(月)
研修内容
公共施設白書 公共施設の現状と課題、今後の取り組みについて→詳細
場所
倉敷市役所

岡山県倉敷市

静岡県浜松市
日時
平成25年(2013)10月22日(火)
研修内容
公共施設再配置計画 効率的な公共施設の運営・管理について → 詳細
場所
浜松市役所

静岡県浜松市

千葉県佐倉市
日時
平成25年(2013)10月23日(水)
研修内容
佐倉市施設白書 ファシリティマネジメントの推進について → 詳細
場所
佐倉市役所

千葉県佐倉市

倉敷市:公共施設白書 公共施設の現状と課題、今後の取り組みについて

日時
平成25年(2013)10月21日(月)
場所
倉敷市役所
研修内容

岡山県倉敷市では、平成23年1月に「行財政改革プラン2011~未来の倉敷のために今取り組む改革~」を策定され、行財政改革の柱と一つとして「ファシリティマネジメント(FM)の推進」を掲げられている。(以下、ファシリティマネジメントをFMと表記)

ファシリティマネジメントとは「企業・団体等が保有又は使用する全施設資産及びそれらの利用環境を経営戦略的視点から総合的かつ統括的に企画、管理、活用する経営活動」と定義されている物です。これは単に手法という範疇から、より広くFMを経営的視点に立った総合的な活動と言えます。

詳しくは、公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)サイトを参照

FMに取り組むきっかけとなったのは、公共施設が年毎に増加していった事、その公用施設の老朽化が進んでいる事、財政状況から今後、公共施設の更新・維持費用をまかないきれない事、が挙げられたようだ。

平成23年4月に、財産活用課内にFM担当の「長期修繕計画室」を設置された。
室内の人員は、ファシリティマネージャー、建築技師、機械技師、電気技師の4名でのスタート。

まず行われたのは、現状を把握するための建物設備点検であったようだ。

  • 建物設備点検
     ↓
  • 現状把握「データの一元化」
  • 長寿命化「修繕予算配分」
  • 意識改革「FM職員研修と情報提供」
  • マネジメント「施設白書」
  • 予防保全「長期修繕経計画の作成」
  • 経費削減「維持管理業務の一元化」

平成25年3月には「倉敷市公共施設白書」(本編)がまとめられ、H25年度には(施設別編)がまとめられる見込みとの事。
(施設別編)では、施設カルテとして作成され、同種施設の比較や施設の再配置を議論する祭の資料として用いられるようだ。

倉敷市のFMへの取り組みとして特徴的なのは、FMマネージャ(民間企業経験者)を採用し、マネージャのもと技術者(建築技師、機械技師、電気技師)でチームが立ち上がっている事と言える。4名でスタートした「長期修繕計画室」は、その後事務職1名、技術職4名を増員し合計9名の体制であり、技術職中心の組織であることがうかがえる。

職員の意識改革のために、研修会や説明会を数多く実施され、今後「公共施設の建物・設備点検マニュアル」作成に結びつけたいとの事であった。

倉敷市では、公共施設の再配置には未着手とのことだが、施設の維持管理方法の見直しについては積極的に取り組まれている状況のようだ。

佐倉市施設白書 ファシリティマネジメントの推進について

浜松市:公共施設再配置計画 効率的な公共施設の運営・管理について

日時
平成25年(2013)10月22日(火)
場所
浜松市役所
研修内容

浜松市では、ファシリティマネジメントによる資産経営という考え方で、持続可能な財政運営への取り組みがなされている。

推進体制

  • H19年度 企画課・管財課・公共建設課の担当者による「FMプロジェクトチーム」結成
  • H20年度 企画部内に資産経営課を設置/資産経営推進会議の設置
  • H22年度 財務部管財課と企画部資産経営課を統合し、財務部資産経営課に再編
  • H25年度 都市整備部公共施設課および土木部工事検査課を財務部へ移管

しくみづくり

  • 「資産経営推進方針」の作成
     【資産経営の取り組みの考え方】
      ・保有財産の最適化
      ・保有財産の利活用
      ・維持管理コストの最適化と環境対応
      ・活用財産の長寿命化
  • データの一元化実施
      ・資産経営システムの導入 → 施設カルテの作成
  • 職員研修の実施

施設評価の実施

  • 評価実施環境整備
    ↓  データ一元化
  • 客観的評価
    ↓  一次評価:施設別に指標化
    ↓  二次評価:目的別(群)偏差値化
  • 個別分析敵評価/組織横断の視点
    ↓  評価分類→三次評価
  • 施設評価(案)公表
  • 意見徴収
  • 庁内調整
  • 総合評価
  • 最終決定

資産経営課が所管課と連携しながら推進
資産経営推進会議(部長級会議)が調整

第1期施設評価(H21年度末公表)

継続 廃止
継続 改善 見直し 管理主体変更
(実質廃止)
小計
236 248 43 98 625 111 736

第2期施設評価(H23年度末公表)

継続 廃止
継続 改善 見直し 管理主体変更
(実質廃止)
所管評価 小計
448 47 45 93 118 751 60 811

公共施設再編への取り組み

【基本方針】

  • 用途別・利用圏域別区分による施設の整理と統廃合
  • 利用目的の複合化と市民協働による施設の活性化
  • 地域の実情に配慮した施設の配置

H26年度末までに383施設の廃止および管理主体変更を目標に実施中

平成17年に合併がなされかなり広範囲な中山間地域を抱えた事により、それまで各地域に配置されていた公共施設を再配置する必要に迫られていたとの事。
倉敷市と同様に、施設数が年々増えてきた事、その施設の老朽化が進んで入る事、財政状況から保有する施設を圧縮する必要があった事などが取り組みのきっかけとなったようだ。

ここでも、情報の一元化による現状の把握が何よりも重要であり、まず取り組むべき事であると感じさせられた。客観的に状況把握ができなければ何の議論も進まないのである。
出雲市においては、情報整理はある程度行われているが、数値化などによって客観的に評価を加えられる段階には至っていない。

出雲市より財政的に遙かに健全的な浜松市において、大いなる危機感を持って、ファシリティマネジメントに取り組まれ、公共施設の再配置や効率的な活用が進んでいる事に、焦燥感を感じざるを得ない。

浜松市:公共施設再配置計画 効率的な公共施設の運営・管理について

佐倉市:施設白書 ファシリティマネジメントの推進について

日時
平成25年(2013)10月23日(水)
場所
佐倉市役所
研修内容

佐倉市では、組織全体に及ぶファシリティ(施設とその環境)を総合的に把握し、ライフサイクルでの全体適正を目指す取り組みがなされている。

市有施設が抱える諸課題(背景)

  • 一元化されたデータの不在
  • ストック量の多さと老朽化
  • 厳しい財政状況
  • 所管部署ごとによる分散管理体制
  • 社会情勢の変化
  • 環境問題への対応
  • 防災対策

推進体制

  • 従来の体制
      データ:都市部建築指導課
      土地:総務部管財課
      建物:都市部営繕課
      運営:企画政策部企画政策課
  • H20年4月 都市部建築指導課・総務部管財課・都市部営繕課を総務部管財課に統合
  • H22年6月 総務部管財課に企画政策部企画政策課も加えて、資産管理経営室(部に属さない)に再編編成
      FM推進班…FMタスクフォース
      FM管理班…管財
      FM保全班…営繕

ファシリティの「見せる化」

  • 保全情報システムの導入
  • 施設白書の公表 など

佐倉市では、施設白書はすでに作成済みであるが、公共施設の再配置計画作成には至っていない。しかしながら、ファシリティマネジメントを推進する体制づくりを早期に実現し、「施設経営」という観点から、様々な取り組みがなされており、大いに参考にすべきであると感じた。

ファシリティマネジメントという視点で公共施設の効率的運用を実現するのであれば、やはりそのための体制づくりが必須と言えよう。
「縦割り」に対して「横串」を入れていかなくては進むべき道筋も見えてこないのではないかと感じた。出雲市においても早急に体制の見直しを図るべきであろう。

特筆すべきは、大学と連携してファシリティマネジメントの共同研究を行っている点である。導入された保全情報システムはインターネットを介したシステムであるため、庁舎外とも情報の共有が可能であるとの事だ。

佐倉市:施設白書 ファシリティマネジメントの推進について

まとめ

今回の視察研修を通して、次の項目について出雲市でも早急に進めるべきであると感じた

  • 何よりも現状を把握する必要があること
  • 情報を一元的に管理できるしくみを作ること
  • 縦割りを超えた組織再編を行うこと
  • 客観的な判断材料得るために数値化を行った施設カルテを整備すること
  • ファシリティマネジメントは教育施設を含めたすべての公共施設を対象とすること

今回訪れた3市はいずれも、出雲市より財政的に遙かに健全的な市である。それらの市が大いなる危機感を持って、ファシリティマネジメントに取り組み、公共施設の再配置や効率的な活用が進んでいる事に、焦燥感を感じざるを得ない。
年々保有する施設数が増えてきた事、その施設の老朽化が進んで入る事、財政状況から保有する施設を圧縮する必要がある事は、出雲市においても明白な事実である。
特に出雲市においては合併前の各自治体が整備してきた施設が、距離的にも目的においても重複するものがみられる事など、再編・整理が喫緊の課題であると叫ばれて久しい。一日も早く再編へ着手すべきであると強く感じた。

今回の視察では、情報の一元化による現状の把握が何よりも重要であることを強く感じるとともに、施設カルテ等よる数値化により客観的な判断材料を整理しなくてはならないとの認識を得た。
そのためには何からの情報処理システムを導入し全庁的な取り組みを可能とすべきであろう。

ファシリティマネジメントを導入し公共施設の整理や効率的な運用を行う事は大変重要であり早急に取り組むべきと考えるが、やはりそのための体制づくりが必須と言えよう。
FMでは「縦割り」に対して「横串」を入れる必要性が強調されるが、まさしくそのような体制を早急に整える必要がある。出雲市においても早急に体制の見直しを図るべきであろう。

更に、いずれの市も職員の意識改革のために、研修会や説明会を数多く実施されている事は見逃せない。施設再配置にとどまらず、現有施設の維持管理方法の見直しを推進するためには全職員の意識の方向が異なっては意味がない。
再配置計画に実施に至らずとも「施設経営」という観点を持ち、施設の有効活用やメンテナンスの計画策定に大いに役立つはずである。